Anna Choi Travel

──ブルータリティの目が、血走っ

──ブルータリティの目が、血走っていた。この異常さは、もしや薬でもやっているのかもしれない。 「おんらの邪魔をするやつぁ、仕置きしねぇとなぁ」 ニタリ。 保濕針效果  の端が吊り上げられる。しかし、目が笑っていなかった。 そして── 奴は、これまでとは比べ物にならないほどの速さでサキカへと突っ込んできた。反射的に身体強化をして避ける。すぐさま進行方向を変え、サキカに鎌を振り下ろした。 サキカはそれを刀をかざして受け止めて、反撃とばかりに右の拳を叩き込もうとすれば、奴の魔法がサキカの拳をめがけて放たれる。 ──陸ノ型・魔絶ち。 サキカは刀を引いてそれを切り裂いて、上から振り下ろされた鎌を転身することで避けた。 奴に正体を知られてしまうわけにはいかない。攻撃されてばかりであるが、サキカから攻撃することはできない。これ以上弱いふりができないのであれば、せめて自分から攻撃できないふりをすべきであろう。 サキカが退避すると、奴は追ってくると思われたが、しかし、ブルータリティは身を翻した。 ──奴は皆の方へ行くつもりなのだ。 咄嗟に攻撃を仕掛けようとしたが、すでに遅し。奴は転移魔法を使ったのである。 掻き消えるように姿を消した奴に、サキカは舌打ちをしたい心境になったが、顔を歪めるだけに止めて奴の魔力がする方──皆の方へと駆け出したのだった。 .

 「わかった。……そのときはまたつ

「わかった。……そのときはまたついていくさ」あっけらかんと答えたレイト。他の五人も頷いてくれた。「ありがとう」全力で逃げて置き去りにしてしまうか黑眼圈治療しれないと思いながらも、嬉しくなって笑みを溢したのだった。それからまた城下町をぶらぶらと歩き、時折気になった店に入ったり、クラスメートを見かけて何が面白かったかなどと情報を交換しながら、自由行動の時間を過ごす。そして――、またあの男と会った。会った、というより、少し先の曲がり角へと右手から歩いてくる男の気配を察知したサキカは、男の視界に入る前に逃げようとそれまで歩いてきた道を引き返し、近くの四つ角を曲がったのだが。無論突然道を引き返したサキカに六人から理由を聞かれ、男の気配を感じたと答えたところ、才能の無駄遣いだと言われてしまった。「気配察知か……。それって訓練すればできるようになんのか?」何気なく質問してきたアーク。サキカは首肯する。「訓練は大変らしいけどね。俺の場合、もともと魔力とか気配とかに敏感だったけど、……色々あったから磨かれたんだよ」『色々』の内容を瞬時に察してくれたらしい六人は、一様に顔をしかめた。――幼い頃は、森の中に足を踏み入れて、自らの食料を確保しなければなかった。魔物と戦っても勝てる自信はなく、遭遇してしまったら逃げる他ない。時には森の主であり【黒鳳蝶】の守護精霊でもあるプラチナウルフのセネルが守ってくれたこともあったが、セネルも暇ではなく常に共にいることはできなかった。魔物から確実に逃げるきるには、どうすればよいのか。答えは簡単だ。魔物に気がつかれる前に逃げればよいのだ。いくら足が速い魔物からでも、気がつかれる前にその進行方向からそれるように歩けば、出会うこともない。.

  「な、なおちゃん……」

「な、なおちゃん……」その後ろからおずおずと現れたユリアスは、眩しいまでに真っ白なスカートタイプのビキニ。所々に施されたフリルはなんとも女の子らしく可愛らしい。彼女の綺麗暗瘡醫生スタイルと白くきめ細かな肌は、惜しげもなく晒しだされていた。ツインテールにされた長い髪の毛は、艶やかに輝いている。さらにその後ろから堂々と姿を現したのはリリス。獣耳が頭の上で時たまピクリと動き、長い腰から生えた尾はゆらゆらと揺れている。リリスの水着もセパレート タイプであったが、ビキニと言えるほど上半身のそれの丈は短くなく、しかしお腹は見えていた。水色の水玉模様が可愛らしいデザインである。ユリアスの姿を見て、瞬時に目をそらしたサキカは、同じく有舞を見て目をそらしたらしいレイトと目が合い、苦笑いをかわす。「あれ? サキカ君、なんでTシャツ着てるんだい? 暑くはないのかい?」こちらを見たリリスがサキカの暑そうな格好を見て、不思議そうに訊ねた。再び誤魔化そうとしたサキカに、六人の視線が集まる。これでは、どうあがいても誤魔化せられないだろう。かといってTシャツを脱ぐわけにもいかず、苦笑いを浮かべる。「……サキカ」この仲で一番付き合いが長く、秘密を共有しあう仲であるガイアが、口を開いた。「お前の背中に何かあるのは感付いてる。……それが何かまでは知らないが、それを知って態度を変える奴も、気味悪がる奴も、この中にはいない」――ガイアが何を言いたいのかがよくわかった。つまりは、Tシャツを脱いで背中のもの(傷痕) をさらけだそうとも、誰も引いたりはしない、ということを言いたいのだろう。その通りであろうとはわかっていながらも、あれを見せる勇気はサキカにはない。曖昧な笑みを浮かべれば、レイトがずいっと近寄ってきた。「え……、何? わ、ちょ、ちょっと……」レイトは無言でTシャツの裾をつかみ、無理矢理脱がそうとしたのだ。抵抗するサキカに、アークがその背後へと回り込んで、羽交い締めにした。.

 ××××××××寮の自室

××××××××寮の自室へと戻ったサキカは、昼食をとると旅の準備を始めた。ライニーツェの街まで転移で行き来できるため、あまり長旅にはならないが、それでも準備は慎重に去黑眼圈めなくてはならない。(パンと干肉とレーズンと……)食料確保のために一々戦うわけにはいかない。“ボックス”の中の携帯用の食料の量を確認し、ついでに薬草や魔法薬を確認する。当分は大丈夫そうな量があった。本当はサキカの“ボックス”の中は、時が止まっているという便利仕様により生物を入れようと腐ることなく鮮度を保てるのだが、それは時属性をもつことによりなせる技のため、皆には秘密のことである。水筒がわりの革袋に水を詰め、腰にくくりつける。こちらの革袋は、以前の依頼のときも持って行ったもので、サキカの手によって内部に氷属性魔法の魔法陣が描かれており、中の水は冷たさが保たれているという代物だ。(食料の類はこれで大丈夫そうですね……。あとは)“ボックス”から刃渡り10cmほどの銀製のナイフを取り出した。これは森のなかを進むときに木々の邪魔な小枝や長い草を切り開いたり、簡単な調理をしたりするのに便利な物である。それをまた腰にくくりつけ、黒いマントを身に纏う。膝上まである黒い編み上げのブーツ(底には金属板が入り、爪先は金属の加工が施された安全靴仕様)を履けば、準備万端だ。──不意にガイアらしき気配がこちらに向かって来ているのを感じ取った。その気配はサキカの部屋の前で動きをとめる。しばらくして部屋のチャイムがなった。おそらくサキカの様子がおかしいことに気が付いていて、話をしに来たのだろう。.

 ×××××××××××××翌

×××××××××××××翌朝。毎日の日課に従い、夜明け前に起き出したサキカは、村の裏手の森へと入っていった。朝の森の澄んだ空気を大きく吸い込み、鍛練を開始麥皚淇醫生た。「……サキカ」朝一でサキカに声をかけたのは、セネルだ。「鍛練か?」「えぇ」返事をしながら坦々と鍛練を続けるサキカ。セネルはそれを近くに座り込んで眺めはじめた。「おはよう、サキカ」「はい、おはようございます」鍛練後、家から出てきたイレーヌと挨拶を交わした。他人行儀に聞こえてしまう挨拶に、イレーヌは一瞬、悲しげな顔をしたが、すぐに笑みを浮かべる。「朝食は作るわ。皆を呼んで来てくれる?」「はい」サキカは頷いて、宿へと戻って行った。シャワーを浴び、朝食の件をガイア達の部屋を回って伝えると、ガイア達は喜んで了承し、一行はサキカの生まれ育ったあの家へと向かった。カンカンカン……家のドアをノックする音が、まだ静かな村に響いた。サキカ達はイレーヌに招き入れられ、手料理をご馳走になった。「九時にここに集合でいいのよね?」「あぁ……」無愛想な返事を返したのは、ガイアである。どうやら、未だにイレーヌのことをよく思っていないようで、相変わらずの態度だ。話の内容は、勿論依頼についてである。「そう……」素っ気ない態度のガイアに、それ以上の会話が続くわけもなく、会話はあっという間に途切れてしまった。.

開始まで後三十分もない。ユリアスは先程の誤

開始まで後三十分もない。ユリアスは先程の誤解を解き、その後いつもの面子で話をしていれば、あっという間に開始時間になった。――文化祭二日目が始まった。せっせと働く生徒達。ない。生徒に加え使い魔達も働く。皆、楽しそうに笑い、楽しそうに会話をする。それは、サキカにとって眩し過ぎた光景であった。しかし、今は自分もその眩しい光景の一部だ。それがこの上なく嬉しい。だが――(この生活もあと少しで崩れ去ってしまうのですね……)残り二ヶ月ない。戦争が近づけば学園に通うことはできなくなってしまう。忙しいからだけでなく、もし自分の居場所が向こうに知られてしまえば、学園の生徒にも危険が及んでしまう可能性があるからである。戦争後も通える可能性は薄い。これだけ大きな戦争となれば、戦争後は仕事増え、学園に通う暇などなくなる。いずれにしろ、もう二度と送れることはないであろう学園生活。せっかくできた友人とも、二度と会えなくなると思われる。無意識にサキカの表情が歪む。――悲しさや寂しさや切なさの入り混じった、複雑な気持ちによって。しかし――(……仕方がないことなんですよね)サキカは最強。これはこの魔力が覚醒した時から――否、属性神・ゼウスの話によれば生まれる前から決まっていた定めなのだ。変わることのない、この命が尽きるまで続く運命。(……今更、何を考えているのでしょうね、僕は…………)このようなことなど、前々からわかっていた事実だ。.


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