奪われた。どうやって生きて行けばいいんだろう……演

”奪われた。どうやって生きて行けばいいんだろう……演じるものがない女優なんて、生ゴミ以下だ。それが分かっているから、あのイモ女優は嬉々として引き受けたんだろう。

「なんだよ。全然出来てなかった!イモ日本購屋 優の大根ね!」叫んで、玲華はまた俯いた。

(違う。少なくとも、あっちには役が回ってる。……全盛期の子役時代に戻りたい)

バレリーナの子役を演じたあの時期に。夢も希望も、全部全部まだまだ在って、失望なんか知らなくて。――ただ、役に打ち込みたい。

「智花」と肩を叩く音に、玲華は泣き顔を上げた。兄の亜貴が困惑の目で玲華を見下ろしていた。「おにいちゃ……」声にならなくて、玲華はしゃくり上げてみせる。

「なんじゃ、その顔」と亜貴は噴き出して、「Aフロアの会議室」と親指でしゃくってみせる。

「――全く、偽名なんか使ってるから、見つけるのに手間取った。玲華の言葉を思い出したんだ。『飛べないエトワール』の女優のマネージャーのセンで見つけ出したところでね。殴ってやろうかと思ったが……まだ、あの姿勢でいると思うし、俺、土下座した男を殴る蹴るは出来ないから、パス」

つこつこと鼻を啜った玲華は目を見開いた。とはいえ、吊り目なので、アイメイクがなければ、こけしのように地味である。

「お兄ちゃん真宮見つけたの?」

兄の亜貴は頷いて、ネクタイを締め直して立ち上がった。

「実際は、山本大紀。――橋本智花と同レベルの地味な本名だよ。真宮神なんてドキュンネームつけて。お兄ちゃん徹夜だから、ここで失礼する。ああ、いつまでも人の会社で土下座してるんじゃねえよって伝えておけば」

「もしかして……」

玲華は酔いが醒めた真宮の低姿勢を思い出した。「すいません、すいません」と何度も玲華の膝小僧に頭を擦り付けては繰り返していた。

(ヘタレ真宮には用はないんだよね)

玲華はちょっと思考を止めると、首を傾げた。

「智花」と肩を叩く音に、玲華は泣き顔を上げた。兄の亜貴が困惑の目で玲華を見下ろしていた。「おにいちゃ……」声にならなくて、玲華はしゃくり上げてみせる。

「なんじゃ、その顔」と亜貴は噴き出して、「Aフロアの会議室」と親指でしゃくってみせる。

「――全く、偽名なんか使ってるから、見つけるのに手間取った。玲華の言葉を思い出したんだ。『飛べないエトワール』の女優のマネージャーのセンで見つけ出したところでね。殴ってやろうかと思ったが……まだ、あの姿勢でいると思うし、俺、土下座した男を殴る蹴るは出来ないから、パス」

つこつこと鼻を啜った玲華は目を見開いた。とはいえ、吊り目なので、アイメイクがなければ、こけしのように地味である。

「お兄ちゃん真宮見つけたの?」

兄の亜貴は頷いて、ネクタイを締め直して立ち上がった。

「実際は、山本大紀。――橋本智花と同レベルの地味な本名だよ。真宮神なんてドキュンネームつけて。お兄ちゃん徹夜だから、ここで失礼する。ああ、いつまでも人の会社で土下座してるんじゃねえよって伝えておけば」

「もしかして……」

玲華は酔いが醒めた真宮の低姿勢を思い出した。「すいません、すいません」と何度も玲華の膝小僧に頭を擦り付けては繰り返していた。

(ヘタレ真宮には用はないんだよね)

玲華はちょっと思考を止めると、首を傾げた。

「お兄ちゃん、どうすれば酒乱にできるか知ってる?」

「知るか。俺はホワっと終わって寝てますからね」前回の玲華への応酬をこなすと、亜貴は「しかし」と同じように首を捻った。

「あれが、おまえを変えるほどの夜を過ごした男?……玲華、夢でも見ていたんじゃないのか?それに、酒乱であるとしても、大抵の男は、酔いが過ぎればセックスどころじゃなくなるぞ。もし、本当の話なら――」

亜貴は玲華の顔を見て「失言だな」とほおを染めた。

「そのコントロール出来ていない色香で一目瞭然か……俺がシスコンじゃなくて良かったよ」とブツブツ言って去って行った。
「お兄ちゃん、どうすれば酒乱にできるか知ってる?」

「知るか。俺はホワっと終わって寝てますからね」前回の玲華への応酬をこなすと、亜貴は「しかし」と同じように首を捻った。

「あれが、おまえを変えるほどの夜を過ごした男?……玲華、夢でも見ていたんじゃないのか?それに、酒乱であるとしても、大抵の男は、酔いが過ぎればセックスどころじゃなくなるぞ。もし、本当の話なら――」

亜貴は玲華の顔を見て「失言だな」とほおを染めた。

「そのコントロール出来ていない色香で一目瞭然か……俺がシスコンじゃなくて良かったよ」とブツブツ言って去って行った。
玲華は非常階段の扉をがつんと開けると、手すりを掴んで階段に足を掛けた。Aフロアの会議室は十階。一段一段なんか登らない。

一段飛ばしで駆け上がってやる。鈴菜玲華は常人とは違う。努力だって苦労だって一段飛ばしで、爪先を伸ばす。Cinderellaは階段を降りて靴を忘れちゃった。でも、こっちのCinderellaは靴なんか落とさない。

玲華はひょいと靴を脱ぐと、鞄に入れた。冷たい廊下の感触が気持ちよい。真宮の足キスも、ひんやりしていて、心地良かった。

手すりを掴んで上半身のバネを確かめる。必死で階段を登っている間に、過去もまた巻き戻しの階段を昇り始めた。

足元は羽が生えたように軽い。大好きなバレエの感覚。モダンバレエを勉強出来ると思っていたのに、背中に損傷を受けて、玲華のプリマドンナの夢は消えた。

演技も好きだけど、舞台がいい。しかし、もう戻れなくなった。

――あたしは泣くべきだったんだ。怒りは何も生まないし。

「これで終わりっ!」すたん、と最上階まで駆け上がって、登ってきた道を見下ろした。蛇腹のようにたくさんの階段が見える。ちょっと、王子様は高い場所に居すぎ。

玲華は非常階段の扉をがつんと開けると、手すりを掴んで階段に足を掛けた。Aフロアの会議室は十階。一段一段なんか登らない。

一段飛ばしで駆け上がってやる。鈴菜玲華は常人とは違う。努力だって苦労だって一段飛ばしで、爪先を伸ばす。Cinderellaは階段を降りて靴を忘れちゃった。でも、こっちのCinderellaは靴なんか落とさない。

玲華はひょいと靴を脱ぐと、鞄に入れた。冷たい廊下の感触が気持ちよい。真宮の足キスも、ひんやりしていて、心地良かった。

手すりを掴んで上半身のバネを確かめる。必死で階段を登っている間に、過去もまた巻き戻しの階段を昇り始めた。

足元は羽が生えたように軽い。大好きなバレエの感覚。モダンバレエを勉強出来ると思っていたのに、背中に損傷を受けて、玲華のプリマドンナの夢は消えた。

演技も好きだけど、舞台がいい。しかし、もう戻れなくなった。

――あたしは泣くべきだったんだ。怒りは何も生まないし。

「これで終わりっ!」すたん、と最上階まで駆け上がって、登ってきた道を見下ろした。蛇腹のようにたくさんの階段が見える。ちょっと、王子様は高い場所に居すぎ。

非情防火扉を開けると、A会議室が見える。

――窓辺が真宮は似合うのよね。ああ、なんか信じられない。兄、優秀過ぎ。

「入るよ」玲華はすうと息を整えてドアを開ける。

「誰もいないし」一回り視線を回して、ドアに手をかけた玲華は硬直した。
「誠に、すみませんでした!」足元に土下座を噛まして、真宮が蹲っていた。

「あ、あの」絨毯の埃を吸い込みそうなほど、真宮は土下座姿勢で何度も呻く。

「あの、お叱りは受けるつもりで参りました。如何様にもなさってください。玲華さま!」

――玲華、さまぁ?

「いかようにも?」

面白い。しゃがみ込んでみても、真宮は顔を上げやしない。玲華は椅子を引き寄せて、眼の前にどかっと座った。靴の爪先で、真宮の顎を上げた。
気分はナチ女元帥といったところか。鞭があれば、振り回すところだ。

「なら、約束通りやり直しして貰いたいね。あたしの性的魅力、壊れちゃったみたいだし」
「無理です」

真宮は告げると、両手を着けたまま、顔を背けた。

「僕は、女性には反応しないんです。だから、あの夜のようにどうすればいいか、分からない」

玲華はきょと、と目を瞠ると、爪先で更に真宮の顎を押し上げた。

非情防火扉を開けると、A会議室が見える。

――窓辺が真宮は似合うのよね。ああ、なんか信じられない。兄、優秀過ぎ。

「入るよ」玲華はすうと息を整えてドアを開ける。

「誰もいないし」一回り視線を回して、ドアに手をかけた玲華は硬直した。
「誠に、すみませんでした!」足元に土下座を噛まして、真宮が蹲っていた。

「あ、あの」絨毯の埃を吸い込みそうなほど、真宮は土下座姿勢で何度も呻く。

「あの、お叱りは受けるつもりで参りました。如何様にもなさってください。玲華さま!」

――玲華、さまぁ?

「いかようにも?」

面白い。しゃがみ込んでみても、真宮は顔を上げやしない。玲華は椅子を引き寄せて、眼の前にどかっと座った。靴の爪先で、真宮の顎を上げた。
気分はナチ女元帥といったところか。鞭があれば、振り回すところだ。

「なら、約束通りやり直しして貰いたいね。あたしの性的魅力、壊れちゃったみたいだし」
「無理です」

真宮は告げると、両手を着けたまま、顔を背けた。

「僕は、女性には反応しないんです。だから、あの夜のようにどうすればいいか、分からない」

玲華はきょと、と目を瞠ると、爪先で更に真宮の顎を押し上げた。

「なに、顔を背けてんの。なら、全力で考えなさい。真宮。どうしたら、あの夜のように出来るのか。酔えばいい?どのくらい飲んだら、また……」

真宮は「すみません」と再度謝罪を繰り返して、「やり直しは出来ないので、……同じような刺激的な場所へお連れします」

――刺激的な場所?

「それって、あの夜よりも凄い?」

「ええ」と真宮は微笑んだ。後で、申し訳なさそうに口にする。

「貴方が、以前のエトワールの事故に遭った女優だったのですね。……橋本亜貴さまから聞きました。僕は、謝りようがありませんね……あなたに迷惑を掛けすぎている」
「あ、聞いたの?」
「――バレエを断念された、と。背中の怪我で、仕事にも限度が出来てしまったと」

玲華は押し黙った。こっちがそれをネタにしようとしているのに、先に言われてしまっては、身動きが取れなくなる。「どこまで、卑怯なのよ……」呟いた時には、玲華は真宮のほおを足で蹴っ飛ばしていた。真宮はテーブルに頭をぶつけて、蹲る。

「だから!あんたのせいにするしかないのよ!あんたが、あの女優の下手さを見抜いて止めてれば……!ううん、マネージャーなら、最後まで仕事させるのが当たり前でしょうが!そんで、あたしが望んだ時には抱けません?もういい、あんたの給与なんか、紙屑にしてやるから!今後、業界であたしの前に顔……」

「なに、顔を背けてんの。なら、全力で考えなさい。真宮。どうしたら、あの夜のように出来るのか。酔えばいい?どのくらい飲んだら、また……」

真宮は「すみません」と再度謝罪を繰り返して、「やり直しは出来ないので、……同じような刺激的な場所へお連れします」

――刺激的な場所?

「それって、あの夜よりも凄い?」

「ええ」と真宮は微笑んだ。後で、申し訳なさそうに口にする。

「貴方が、以前のエトワールの事故に遭った女優だったのですね。……橋本亜貴さまから聞きました。僕は、謝りようがありませんね……あなたに迷惑を掛けすぎている」
「あ、聞いたの?」
「――バレエを断念された、と。背中の怪我で、仕事にも限度が出来てしまったと」

玲華は押し黙った。こっちがそれをネタにしようとしているのに、先に言われてしまっては、身動きが取れなくなる。「どこまで、卑怯なのよ……」呟いた時には、玲華は真宮のほおを足で蹴っ飛ばしていた。真宮はテーブルに頭をぶつけて、蹲る。

「だから!あんたのせいにするしかないのよ!あんたが、あの女優の下手さを見抜いて止めてれば……!ううん、マネージャーなら、最後まで仕事させるのが当たり前でしょうが!そんで、あたしが望んだ時には抱けません?もういい、あんたの給与なんか、紙屑にしてやるから!今後、業界であたしの前に顔……」

真宮は動かなくなった。心配で、玲華は声を掛けた。

「あの……」「フフッ……そういう話ですか」独り言が聞こえた。頭を蹴飛ばしたので、オフェリアにでも陥ったのかと、玲華は不安になって椅子から立ち上がった。

「皮肉なものだ。……認めたくなかったな」

「真宮?」真宮は目元を赤らめて、「これを」と玲華の手を自らのモノに引いて当てさせた。

――あ。

何度も目撃した。男性の不思議。真宮のモノは服越しでも分かるくらいはっきりと屹立している。

真宮はクッと片眉を下げて、気恥ずかしそうに玲華を仰ぎ見た。

「どうやらね、僕は貴女の足で、興奮する変態らしいです。酔いもあっただろうが、僕は自分が人の足などに傅く人間ではないと思いたかったが、体は素直だ。恐らく、貴女の足が絡まったせいで、オンナであることも忘れていたのでしょう。僕は本来は……オンナ側ですので。つまり、こっちは貴女が初めてだったと言ったら信じますか」

玲華は恐らくは言いたくなかったはずの真宮の吐露に、固唾を呑んだ。
不思議だが、真宮の真摯さに心打たれたと言えばいいか。恥部だと思った。なのに、真宮は包み隠さず玲華に打ち明けてくれた。

「ん、信じる」

真宮は動かなくなった。心配で、玲華は声を掛けた。

「あの……」「フフッ……そういう話ですか」独り言が聞こえた。頭を蹴飛ばしたので、オフェリアにでも陥ったのかと、玲華は不安になって椅子から立ち上がった。

「皮肉なものだ。……認めたくなかったな」

「真宮?」真宮は目元を赤らめて、「これを」と玲華の手を自らのモノに引いて当てさせた。

――あ。

何度も目撃した。男性の不思議。真宮のモノは服越しでも分かるくらいはっきりと屹立している。

真宮はクッと片眉を下げて、気恥ずかしそうに玲華を仰ぎ見た。

「どうやらね、僕は貴女の足で、興奮する変態らしいです。酔いもあっただろうが、僕は自分が人の足などに傅く人間ではないと思いたかったが、体は素直だ。恐らく、貴女の足が絡まったせいで、オンナであることも忘れていたのでしょう。僕は本来は……オンナ側ですので。つまり、こっちは貴女が初めてだったと言ったら信じますか」

玲華は恐らくは言いたくなかったはずの真宮の吐露に、固唾を呑んだ。
不思議だが、真宮の真摯さに心打たれたと言えばいいか。恥部だと思った。なのに、真宮は包み隠さず玲華に打ち明けてくれた。

「ん、信じる」

「――来て下さい。今の内だ。やり直しの約束でしたね。今、果たします。体調は?」
「あ、うん。元気だけど……」

(今、ここで?)

足が頽れた。あの夜の衝撃が目覚めて、一気に玲華を駆け巡る。(あんな風にされたら、また……)ぺたん、と絨毯に座り込んだ玲華に、真宮は「恐らく手荒くはしないでしょう。貴女が望むなら別ですが」と微笑んだ――。
「――来て下さい。今の内だ。やり直しの約束でしたね。今、果たします。体調は?」
「あ、うん。元気だけど……」

(今、ここで?)

足が頽れた。あの夜の衝撃が目覚めて、一気に玲華を駆け巡る。(あんな風にされたら、また……)ぺたん、と絨毯に座り込んだ玲華に、真宮は「恐らく手荒くはしないでしょう。貴女が望むなら別ですが」と微笑んだ――。
***

キャナルグループの本社は、東京湾のテーマパークのそばにある。その影響か、夕陽が蒼空を彩ると、水面の反射も一層激しく、周辺をオレンジの大気がふんわりと包み込む光景になる。象徴となる観覧車が色とりどりに点灯するも、この時間だ。

「何、見てるんですか」
「あ、夕陽の中の観覧車って好き……」

玲華はきゅっと唇を引くと、ちらっと夕陽なんかに視線を逸らせてみた。深夜だったから、あの勢いはあった。

(こう、ここ、お母さんの会社だしさ……まさか、急に言われると思ってないじゃん!)なんて腹で喚いても、自分の弱さを露顕してどうする、な自己ツッコミしか出て来ない。

真宮は少し広げた足に手を乗せて、前屈みで玲華を呼んだ。

「――なんで、僕を呼んだんですか。先程キャナルの専務(兄・亜貴の揶揄)が妹がどうしてもというし、そこまで謝るなら、ちゃんと相手してやれ」と言いましたが……それなのに、貴女は夕陽の観覧車なんか見詰めています。その理由は?」

――図星を指されたも同然。男女の経験は済ませたが、今度は経験がないから、真宮を誘えない。

(どうすればいいんだ、コレ。……鈴菜玲華の名が廃る!)

***

キャナルグループの本社は、東京湾のテーマパークのそばにある。その影響か、夕陽が蒼空を彩ると、水面の反射も一層激しく、周辺をオレンジの大気がふんわりと包み込む光景になる。象徴となる観覧車が色とりどりに点灯するも、この時間だ。

「何、見てるんですか」
「あ、夕陽の中の観覧車って好き……」

玲華はきゅっと唇を引くと、ちらっと夕陽なんかに視線を逸らせてみた。深夜だったから、あの勢いはあった。

(こう、ここ、お母さんの会社だしさ……まさか、急に言われると思ってないじゃん!)なんて腹で喚いても、自分の弱さを露顕してどうする、な自己ツッコミしか出て来ない。

真宮は少し広げた足に手を乗せて、前屈みで玲華を呼んだ。

「――なんで、僕を呼んだんですか。先程キャナルの専務(兄・亜貴の揶揄)が妹がどうしてもというし、そこまで謝るなら、ちゃんと相手してやれ」と言いましたが……それなのに、貴女は夕陽の観覧車なんか見詰めています。その理由は?」

――図星を指されたも同然。男女の経験は済ませたが、今度は経験がないから、真宮を誘えない。

(どうすればいいんだ、コレ。……鈴菜玲華の名が廃る!)

「分かってる!あんたは良いわよね。酔っ払いの勢いで好き勝手出来て、いさぎよくてさ!」
「潔く見えますか」クス、と真宮はまた特徴ある困り笑顔で、「困りましたね」と素直に口にした。

「さっき、カミングアウトしたでしょ。ねえ、あたしが初めてって本当?経験ないのに」

真宮は「根っからのお嬢だな」と更に玲華のほおを熱くさせる一言を放った。

「なのに、無垢なのに、女王様。そのギャップが刺さりますね」

「――あ、当たり前でしょ。女優目指す女なんて、みんな女王様願望があるわよ。その中でも、あたしは一番の女王蜂になって、世界を見下ろしてやるの」

真宮はきょと、と目を見開いて、「見下ろすか……」とまた低く呟いた。チラ、と見ると、真宮の猛りは収まってはいない。

玲華は背中を向けると、ミニスカートをたくし上げた。一度教えて貰っているんだから、大丈夫と言い聞かせて、下着に指を掛けた。

「違います」と真宮の声。「呆れたお嬢様ですね」と手を押さえられて、くるりと手首を掴まれて、振り向かせられた。

「涙なんか浮かべながら脱がないでいいです。――酔ったあの夜は酷かった。あの惨状を見ればね、何があったかは分かる。なら、僕のすべきことは一つでしょう。傷を負った貴女に傷を増やした。だが」

「分かってる!あんたは良いわよね。酔っ払いの勢いで好き勝手出来て、いさぎよくてさ!」
「潔く見えますか」クス、と真宮はまた特徴ある困り笑顔で、「困りましたね」と素直に口にした。

「さっき、カミングアウトしたでしょ。ねえ、あたしが初めてって本当?経験ないのに」

真宮は「根っからのお嬢だな」と更に玲華のほおを熱くさせる一言を放った。

「なのに、無垢なのに、女王様。そのギャップが刺さりますね」

「――あ、当たり前でしょ。女優目指す女なんて、みんな女王様願望があるわよ。その中でも、あたしは一番の女王蜂になって、世界を見下ろしてやるの」

真宮はきょと、と目を見開いて、「見下ろすか……」とまた低く呟いた。チラ、と見ると、真宮の猛りは収まってはいない。

玲華は背中を向けると、ミニスカートをたくし上げた。一度教えて貰っているんだから、大丈夫と言い聞かせて、下着に指を掛けた。

「違います」と真宮の声。「呆れたお嬢様ですね」と手を押さえられて、くるりと手首を掴まれて、振り向かせられた。

「涙なんか浮かべながら脱がないでいいです。――酔ったあの夜は酷かった。あの惨状を見ればね、何があったかは分かる。なら、僕のすべきことは一つでしょう。傷を負った貴女に傷を増やした。だが」

真宮の真剣な目と初めてぶつかる。いつも、酔っているか、恐縮しているかの男の中に潜む本来の野心の目。魅入っていると、真宮は玲華の手を引いて、壁に寄り掛からせた。

「あの」
「――あの夜の俺はケダモノでしたが、実際は違いますので」いちいち夜を否定してくる真宮が可愛い。「ん、そうなの?」ツンと聞き返すと、真宮は肩を竦めて、玲華のこめかみに唇を押し当てた。

――あ、気持ちいい。

「つめたい」
「――冷えたかな。……そして、なぜに僕は貴女になら、勃つのか……大嫌いなんですよ、女性が、母親も姉も妹も、間に挟まれて嫌になりましたので」

玲華は身を捩りながら、真宮の髪に指を絡めた。あの夜のような酷さと勢いはない。まるで自分がマシュマロになった気分になる。真宮の指先は、一つたりとも、玲華に傷はつけないと言わんが如く、浮いて滑る。

「ただ、気高い人間は好きです」手を太腿に差し込まれて、小さく声を漏らした。冷たい手が、玲華の太腿の間で、ぬくもりを取り戻していく。過程が蜜蕾を内側から刺激していく。

「……少し、唇を開いて貰いたいな」
「え」
「貴女、さっきから、唇震わせているのが気になります。どこが感じました?あの夜。一番どこが良かったですか」
「覚えてないしっ……あ、でも、――……足のつけね、かな……」

玲華は(かああ)と顔を熱くして、「このあたり」と真宮の指先を自分に誘った。「なるほど」と真宮の含み笑いと、眼鏡を外す音。

――あの夜も、眼鏡をタン、と置いた、あのあとに……。

(あ)――ぞくぅっと背中を何度も貫かれた感触が駆け巡る。泣いても喚いても、「貴女が望んだから」と抱き続けたあの感情はもしかして。

玲華は気付いて、ホワ、となった。さっきの「気高い人間は好きです」は玲華に向けられた言葉だ。好き、なんて嬉しい言葉なんだろう。

「その姿勢はきついでしょう。こちらへ」

真宮はぽん、と机を叩いた。
「あの」
「まさか、キャナルの金の卵の女優さんを床に押し倒すわけにはいかないだろ」と玲華を抱いて、机の上に横たわらせると、さっき躊躇した下着に手を添えてみせた。

くい、と綺麗な指先が入り込んで来ると、背中から、足先まで電流が流れた如く、玲華はさっそく体を硬くした。「まな板の上の鯉だ」もともとそういう声音なのか、真宮の声は意地が悪く上滑りする。ひく、となったところに吐息が掛かった。

「ん」と時折の真宮の呼吸と、微かな声に、拳にした手を軽く噛んで身を震わせた。横を向くと、ちょうど観覧車が見えて綺麗だ。ほ、と視線を逃がしていると、刺激は一層強くなった。

「好きなだけ外見ててくださいよ」どうやら、玲華がそぞろになったが気に入らないのか、元々好戦的な性格なのか、容赦のない舌先が玲華を引き戻すように責め立て始めた。

「――んっ」ぴり、とした小さな痛みのあと、刺激は冷やされたように冷たくなった。きゅ、と上唇ではまれて、秘孔の花芯に舌が触れた。さすがに外から視線を戻して、玲華は太腿を自ら押さえねば耐えられなくなる。手を添えた真宮と指先が重なった。

真”

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